給与の話2 -設立の届け出① 税務署-
前回、法律で給料・賞与がどう規定されているかご説明しました。
早速、給与計算のご説明に入っていきたいところですが、実務では、
新規開業した。従業員を雇った。働いてもらった。給与ソフトはある。よし、計算!
とは、いきません。
開業されたのは法人事業ですか? 個人事業ですか? 従業員は何人ですか? さまざまな届出は済まされましたか?
法人事業であれ個人事業であれ、求人を済まされている以上、雇用条件は従業員に説明済みのはずなので、雇用条件通知書や時間外労働の協定等については説明を割愛します。
また、各届の様式や記入例の詳細についてもここでは触れず、概要のみとします。いずれ詳しくお話しする機会もあるかと思います。
開業して初めて給料・賞与を支払う状況になったら、税務署・労働基準監督署(労基署)・公共職業安定所(ハローワーク)・日本年金機構に届け出が必要です。
ただし、法人事業と個人事業では扱いが異なります。共通するのは所得税だけなので、まず税務署から説明していきます。
税務署へは、個人事業で青色申告を選択した場合は別途提出する書類がありますが、これについては6回目でご紹介します。
設立・開業した場合、税務署へは、もちろん給与以外の設立の届け出が必要ですが、ここでは触れません。別途私どもまでお尋ねください。
給与関係では次の二種の届け出が重要です。
一つめ。
給与所得については、職位に関わらず、所得税を源泉徴収(いわゆる天引き)して納付しなければいけません。そのために管轄の税務署に『給与支払事務所等の開設の届』の提出が必要となります。届出を済ませると源泉所得税の納付書が送られてきます。
余談ですが、国に納める税金には汎用の納付書があって、税目等を記入することでほとんどの税目をカバーしていますが、源泉徴収された所得税については別途専用の納付書が用意されていて、その納付書も、給与や配当といった源泉徴収の対象によって様式・記入方法が異なります。汎用の納付書の場合なら、税務署へ行けば白紙を入手するのは簡単ですが、原則的に源泉所得税については税務署名・整理番号・所在地・名称を打ち込んだものでないと発行して貰えません。
二つめの前に、源泉徴収事務について簡単にご説明します。
まずは給与を源泉徴収簿という用紙に記入して集計します。いずれお話しする年末調整もこの用紙で行います。
給与ソフトによっては、源泉徴収簿(年末調整)はオプションということもありますので、ソフトをお使いの場合は、確認の上、適宜補足なさってください。
源泉徴収簿には、給与額、社会保険料額、源泉徴収額等を記入していきます
従業員の所得税をそれぞれいくら源泉徴収するかについては、個々人の状況によって異なります。その状況等を事業所に届け出る用紙を『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』といいます。従業員を採用された時は、この用紙の裏面をよく読んで提出してもらってください。詳細は回を改めてご説明します。
源泉徴収した所得税は、1カ月(暦日)分を集計して、納付書に必要事項を記入し、翌月10日までに金融機関等で納付する仕組みです。納付可能なのは銀行・信金・郵便局・税務署等で、コンビニでは納付できません。
今は、ダイレクト納付といって口座振替による納付や、インターネット、クレジットカードによる納付も可能ですが、届出や委託が必要となります。
給与の場合、20日〆翌月20日払いといった締切日と支給日が異なる場合が多いのですが、あくまで納付書の日付は支給日で記入します。この税金は納期限を過ぎた場合、不納付加算税という率の高い罰金が科されます。
うっかり納付書に締切日を記入したりすると、納期限が前倒しになって罰金対象になるかもしれないので要注意です。
原則は、毎月徴収・翌月10日までに納付ですが、支給人員常時10人未満の事業所では、毎月徴収したものを半年に一回納付できる仕組みがあります。
これが二つ目の書類『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』です。
この申請を提出して承認されると、原則として提出日の翌月に支払う給与等からこの仕組みが使えます。
1月から6月に徴収した分を7月10までに、7月から12月に徴収した分を1月20日までに納付するものです。納付書も毎月用ではない納期特例専用の納付書が発行されます。
納期特例の制度をとるかどうかは自由です。事務処理軽減と納付もれのリスク減少にはなるものの、一回の納付金額が大きくなるのを嫌う方もいらっしゃいます。
源泉対象には、配当もあると納付書の説明でお話ししましたが、他に、『報酬、料金等』と呼ばれる外交員、芸能人、税理士等々に支払われるものも源泉徴収の対象です。給与と一緒の納付書で納付できるのですが、納付もれになりがちなのでお気を付け下さい。
今回の税務署に限らずほとんどの届は、直接役所に提出・郵送提出する以外に、事前に準備さえすれば電子申告(申請)が可能です。郵送の場合は、控や返信用封筒を同封しないと何も戻って来ない場合もありますので、事前にお調べの上、提出されることをお奨めします。
では、次回に続きます。