2019-10-09
給与の話7
給与の話7 -給料計算①-

ようやく給与計算の実務の説明まできました。まずは毎月の給料計算から始めます。
最近のソフトはタイムカードと連動しているので、設定を正しくしておけば簡単に給料明細が印刷できます。
残念ながら手計算ではそうはいきませんのでひとつずつ計算していきましょう。

予定通り、
7回目 給料計算① 
8回目 給料計算②
9回目 給料計算③
10回目 賞与計算
以上でご説明していきます。なお、法令や税率等は2019年8月現在のものですので、お気を付けください。

20日〆当月末日支払いのH商店(京都市)を例にします。

ステップ1
給料の支払額を確定します。まずはタイムカードの締め切りをしてください。
20日〆なので前月21日から当月20日までのタイムカードの集計を行います。
月給・日給・時間給のどの形態でも出勤日数・勤務時間・時間外労働・休日労働・深夜業、年次有給休暇(年休・有休)消化を集計しなくてはいけません。時間外労働等の説明については、まとめてステップ2で行います。

ステップ2
支給額を計算します。
①最初に基本給を確定します。
通常、月給なら固定額ですが、途中入社の場合は日割り計算になるかもしれません。日給月給や時間給はもちろんのこと、勤務時間に応じて計算をしてください。欠勤等の分をマイナスする場合、基本給から直接マイナスする事業所と、不就労(名称は問いません)として項目を作り、別途マイナスする事業所があります。
なお、年休取得の場合ですが、所定労働時間を働いたものとしてカウントするのが一般的です。平均賃金を使用するなどそれ以外の計算方法あり、また、一日単位ではない年休もあります。今年4月からは時季指定義務等もありますので、ここではご説明しきれません。詳しくは当法人へお尋ねください。

②基本給以外の各種手当がある場合は、その金額を算定してください。
皆勤手当のようにその月によって変わるもの、家族手当のように基本的に変わらないもの。各種手当は事業所の特色を出すためにもさまざまなものが設定されます。
役職・資格手当はポピュラーなものです。通勤時間の短縮奨励に会社の近くにお住いの従業員に近隣手当を支給される事業所もあります。昨年の異常な暑さから真夏日手当・猛暑日手当を支給された会社もありました。
手当の数が多い事業所もあれば、基本給のみの事業所もあり得ますが、ベースは基本給、通勤手当(交通費)、割増賃金(時間外手当等)のセットです。

③通勤手当・交通費については、定期代、交通機関の立て替えが一般的です。自動車通の場合は距離によって規定を決めている場合が多く、また上限を設定している例も多く見受けられます。交通費は一切支給しない事業所もあります。
これについては、雇い入れ時の取り決め等で支給してください。

④割増賃金の計算です。いわゆる時間外手当、休出手当、深夜業代と呼ばれるもので、ステップ1で集計する必要があると説明したものです。

労働基準法で法定労働を1日8時間以内、1週40時間以内と定めているので、これを超えた分がいわゆる残業(時間外)です。時間給換算をしたものに2割5分以上の割増をするのが一般的ですが、日給を基礎にする場合もあります。

休日労働の場合、法定休日なら3割5分以上、所定休日は2割5分以上の割増しが必要です。
労働基準法では週に1回もしくは4週4回の休日を与えなければいけないと規定しています。その休日が法定休日で、それ以外が所定休日です。
1日8時間労働の場合は通常週休2日となるので、どちらかが(一般的には日曜日)が法定休日でもう一方が所定休日となります。週休1日の場合は、必然的に休日=法定休日となります。割増率が違うので、法定休日がいつかを規定しておくことをお勧めします。

また、原則午後10時から翌朝5時までは深夜時間帯なので2割5分以上の割増しとなります。深夜については、時間外労働や休日労働と重複して割増ししてください。

これらは、現行法での中小企業向けの労働基準法にのっとっているので、それよりも従業員に有利な計算(7時間以上について割り増す、割増率を高く設定する等)をすることに何ら問題はありません。
法定割増率については、現在、中小企業においては猶予期間となっています。2023年4月以降については、1か月間で60時間超の時間外労働があれば、超過部分については法定割増率が5割以上となります。ご注意ください。

よくある間違いに、割増率をかける時間給換算した額(正しくは、割増賃金の基礎となる賃金と呼びます)、とは、単純に基本給だけを時間給に換算したもの、という捉え方があります。
アルバイト募集広告で、「22時までは時給900円、22時から5時は時給1,125円」などを見慣れていたせいか、アルバイトの時間給の考えをそのまま月給に転用される方が多いのですが、割増賃金の基礎となるのは、所定労働に対して支払われる1時間当たりの金額です。基本給のみの場合は別ですが、基本給に各種手当も含めたものが対象となります。対象とならない手当は限定列挙なので、ほとんどの手当が対象となるとお考えください。

ところで、アルバイトの時給を900円で例示しましたが、10/1より最低賃金が引き上げられました。最低賃金は都道府県によって異なるので、京都府ならいわゆる最賃割れでNG、お隣の滋賀県や兵庫県ならOK(特定最低賃金を除く)となります。お気を付けください。

閑話休題。
割増賃金の計算の基礎から除外できるもの
①家族手当  家族の人数等に応じて支給する場合
②通勤手当  実際に要した費用に応じて支給する場合
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当  賃貸住宅の家賃やローン月額の一定割合を支給する場合。住宅の形態ごとに一律で定額支給する場合等は当てはまらない。
⑥臨時に支払われた賃金  傷病手当等
⑦1カ月を超える期間後地に支払われる賃金  賞与等

各種手当と基本給を集計します。集計したものを総支給額と言います。
ステップ2はここまでです。

今回はこのあたりで。次回に続きます。