2019-07-24
給与の話5
給与の話5 -設立の届け出④ 年金機構-

社会保険の届け出の続きです。
前回は触れませんでしたが、お尋ねがあったので補足します。
社会保険では給料と賞与で、保険料の算定方法が違います。昔は、賞与については社会保険の対象ではありませんでした。システムもそれに従って構築されました。そうなると抜け道もでき、また、年金原資はあっというどこかへ・・・ともなり、賞与からも徴収されるようになりました。標準報酬月額とは関係がないので触れませんでしたが、計算方法等は改めてお話しします。

では、社会保険の届け出です。

日本年金機構の事務センターもしくは年金事務所に『健康保険・厚生年金保険新規適用届』、『健康保険・厚生年金被保険者資格取得届』、扶養家族がおられる場合は『健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届』を提出します。
ここでポイントですが、税金・労働保険は、届出書の提出日ではなく、設立日もしくは事実が発生した日からスタートしますが、健康保険と厚生年金については、原則、届出書を提出した日を含む月からのスタートとなります。設立時は、労働保険等との届出日のズレによって、社会保険だけ加入が遅れる場合もあるのでご注意ください。

『新規適用届』の添付書類は、法人事業の履歴事項全部証明(登記簿謄本)、個人事業は住民票。コピーは不可なので労働保険の提出時に謄本の原本を残しておくとここで使えます。
事業所所在地が登記等と違う場合は、賃貸借契約書等の写しも必要です。
前回ご説明した任意適用の事業所の場合は、他にも必要な書類があり、また事務センターではなく年金事務所へ提出した方が早い場合が多いので、年金事務所と事前に調整しておくとスムーズに流れます。

前回までの説明で、一般的な適用対象範囲が、税務>労災>雇保となることはご理解いただけているかと思います。その中で社会保険は、より加入の範囲が絞られています。そのため『新規適用届』の提出後の半年程度内に確認調査があります。従業員の場合は、いわゆるパートタイマー従業員が対象となるかどうか。役員の場合は、常勤であるか否か、控除している保険料は適切かなどが確認されます。

『資格取得届』では、時間外手当や通勤手当等を含めた給料の見積額を届け出なければいけません。見積額はそのまま月額標準報酬の等級表に当てはめて標準報酬等級が決定します。
前回、4月から6月の給料平均で社会保険の等級が決まることをご説明しましたが、資格取得時のみ見積りで等級が決定します。あまりに実際の金額とかけ離れた場合、取得届を訂正しなければいけない場合もありますのでお気を付け下さい。

次に『被扶養者届』です。これについては、被扶養者(扶養家族)になれるかどうかの基準があり、添付資料が必要な場合・省略可能な場合があります。

◎続柄要件
  被扶養者になれる範囲は、配偶者・直系尊属・子・孫・兄弟姉妹以外の三親等以内の親族。
◎収入要件
 被扶養者になるには、加入時点での年間収入が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)。
◎同一世帯要件
 配偶者・直系尊属・子・孫・兄弟姉妹以外の三親等以内の親族は同一世帯でなくてはいけない。

戸籍上の関係を必要とする所得税に比べ、社会保険は事実婚(内縁関係)を認めています。内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本と世帯全員の住民票等の添付が必要となりますが、扶養家族になることは可能です。
それ以外の添付書類とその省略については、2018年10月から一部変更になりました。詳しくは日本年金機構のHPをご参照ください。


また、昨秋に、厚生労働省が厚生年金に加入するパートタイマーの適用対象を拡大することを検討している旨の報道がありました。8.8万円や6.6万円という額がクローズアップされていました。あの記事の見出しに混乱された方もいらっしゃったようです。前回の適用拡大の時も混乱された方から説明を求められましたので、ここで説明をしておきます。

まず、扶養家族になるための収入要件の130万円は変わりません。それに対してあの記事の月額8.8万円や6.6万円は社会保険の被保険者(扶養家族としてではなく本人が保険を持つ)の要件の金額です。
前回は説明を割愛しましたが、2016年10月から、従業員(被保険者)数が501人以上の事業所にお勤めで、1週の労働時間が20時間以上、1カ月当たりの給料が8.8万円以上の場合は社会保険の適用対象となりました。また、常時500人以下の事業所でも2017年4月からは労使合意があれば、同じ条件で適用可能となりました。
そのため現状では、勤め先の規模もしくは労使合意によって、社会保険適用対象が異なっており、年収の多寡と社会保険の加入がミスマッチしています。

現在検討中の適用範囲の拡大ですが、労働時間・収入・事業所の規模の被保険者要件の、どれがどの程度拡大になるかはまだわかりません。ただ、国民年金3号被保険者問題(いわゆるサラリーマンの妻が国民年金を負担していない問題)は、永年、改正案に上り続けているので、今後、徐々にでも拡大していくことは必須と思われます。

社会保険はここまでです。次回で届け出は終わりです。
なお、これらのご説明は2019年7月現在の法令や通達に基づいておりますので、法令等の変更にはお気を付けください。