2018-12-13
給与の話3
給与の話3 -設立の届け出② 労基署とハローワーク-

他のご案内があったので、少し間があきましたが、引き続き提出関係の説明です。今回は、労働保険関係を説明していきます。
説明の前に、個人事業が法人に形態を変えるいわゆる法人成りについて。
法人成りの税務署への届けは新規設立で前回の説明通りです。ただ、労働保険・社会保険ともに新規設立扱いではなく各種変更扱いになる場合が多く、提出書類も変わります。ここでは開業された場合を想定して説明しますので、法人成りの場合は新規設立扱いか変更扱いかを事前に労基署等へお確かめの上、手続きください。

さて、いわゆる労働者を一人でも雇用すると、労基署(労働基準監督署)に『労働保険関係成立届』と『労働保険概算保険料申告書』を、ハローワーク(公共職業安定所)に『雇用保険適用事業所設置届』と『雇用保険被保険者資格取得届』を提出しなければいけません。
労働保険とは、この場合、労災保険と雇用保険の総称とお考えください。
労基署には36協定(時間外労働の協定)、変形労働時間制(年間を通じて週40時間労働にするもの)等々提出するものは多いのですが、前回お断りしたように、詳しく説明をしているといつまでたっても給与計算までたどり着けないので割愛いたします。

「いわゆる労働者を一人でも雇用すれば」と表現をしましたが、実際のところ、世の中の働いている人の全員が、誰でも、労働保険や健康保険、厚生年金の対象になるわけではありません。労働関係の法律は、たいていの場合『原則』で大枠をくくり、『範囲』を限定し、その上で『例外』を設定します。

まず原則的な労働保険の対象者ですが、労災が『労働の対価を得ているすべて者』。また、雇用保険の方は『1週の所定労働時間が20時間以上であり31日以上の雇用の見込みがある者(昼間学生をのぞく)』とされています。ただし以下の方は範囲外です。

◎法人の役員  代表権がある場合は、労災・雇保ともに範囲外。
◎法人の取締役と監査役  労災は労働者の性質がない部分は範囲外、雇保は原則範囲外。
◎個人事業の事業主と同居の親族  労災・雇保ともに範囲外。

原則・範囲ときたので、次は例外です。
例外の一例として、法人の取締役のうち使用人兼務役員(6回目で説明予定)が雇用保険に加入することは可能です。ただし実態証明を必要とし、ハローワークの承認を受けることが条件です。

代表的なものを例示してみましたが、実際の法律はもっと細かく表記・分類し、適用範囲を絞り込みますので、詳細は条文等をご参照いただくか個別にお尋ねください。

基本の提出は、労基署→ハローワークの順(一元適用)となります。対象者がいなければ、労基署のみになることもあります。また仕組みの異なる二元適用事業の農林水産業・建設業等は、労基署とハローワークに別々に届け出ます。二元適用については、年間業務の回で触れる予定ですので、ここでは、一元適用事業に限定してご説明します。

まずは労基署に『設立届』と『概算保険料申告書』を提出します。これらの届け出は労基署の確認によって完成されるので、記入できる範囲で記入するというスタンスです。特に『概算保険料申告書』は納付書をミシン目で切り取らず提出します。

提出すると、事業の種類確認が行われ、労働保険番号が振り出されます。
法人税などと違い労働保険は業種によって保険料率が異なるため、事業の種類確認が行われ『概算保険料申告書』を補完、控が渡されます。納付書も必要事項を記入の上、渡されるので、金融機関等で納付してください。なお、成立日=初めて労働者を雇い入れた日から50日以内が納期限であり、申告書の提出期限でもあります。

この概算保険料については、設立時だけでなく、毎年提出・納付しなければいけません。詳細については年間業務でまとめてご説明します。ここでは、労働保険料は前払いであり、年度末である翌年3/31までの給与総額を見積って、保険料を算出・納付する必要があるとだけご理解ください。


次にハローワークに、労基署で振り出された労働保険番号を記載した『設置届』と『資格取得届』を提出します。
ここで重要なのが、ここまで提出を進めてきた税務署・労基署と違って、ハローワークでは添付書類が必要だということです。

添付書類
◎労働保険関係成立届の控(労基署に届け出たもの)
◎従業員一覧表(様式が都道府県によって違います。事前に入手するか、氏名・所定労働時間・雇用形態等の記載があれば自作のエクセルで可)
◎法人の場合は履歴事項全部証明(会社の登記簿謄本) 社会保険も加入する場合は、原本還付を受けるかコピーを提出することをオススメ
◎許認可の必要な事業の場合は許認可証等の写し
◎事業所の所在地名称が確認できる書類を2種類以上
  賃貸借契約書(事業所が登記と違う場合は特に)
  取引先からの契約書・請求書
  税務署への開業届控 等々
☆賃金台帳・出勤簿やタイムカード・労働者名簿

ハローワークでは、実際に事業が行われているかの確認が行われます。場合によっては現地調査も行われます。また、確認書類については、窓口によって求められる種類と数が異なる場合が多いので、上記どおりを提出されても追加が必要になるかもしれません。

なお、☆マークは労務関係ではセットで必要なものです。必ず備え付けなさってください。賃金台帳や労働者名簿の様式は厚生労働省のHPからダウンロード可能です。

参考までに、『資格取得届』に記入する雇用保険被保険者番号は原則一人1番号です。わからない場合は、以前のお勤め先名等を備考欄に記入し、ハローワークで検索をかけてもらいます。
また、個人番号(マイナンバー)が未記入の書類は原則返戻となりました。提出拒否の場合はその旨を『資格取得届』の一番下に記入ください。

次回は、健康保険と厚生年金です。労働保険以上にややこしいので、2回に分けて説明します。